千葉ゆかりのあの人に聞く Chibaの魅力
――今回、日本のジャズ・ミュージシャンをゲストにお呼びして、現地のミュージシャンとコラボする形で制作を進めていったとお聞きしています。
私が日本でも一緒に演奏していたり、以前にもニューオリンズに来てくださった人の中で、その時にタイミングがうまく合った方をお呼びしていました。ちょっとまだお呼び出来ていない方もいるんですけど……。
――そうしたら、第2弾もあるということでしょうか?
そうですね、これからも続けていくつもりです。
ニューオリンズが好き、興味があるという日本の方は多くて、海を越えた交流はあるんですけど、なんせ日本とアメリカって遠く離れてるじゃないですか。もちろん言語の壁もあるし。
これが同じアメリカでもニューヨークだと、毎年100人とか1000人とかの日本人がそこに引っ越してくるんですよ。で、みんなで一緒に勉強したり切磋琢磨したり。
でもニューオリンズは私が来て以降、誰もこちらに日本から人が引っ越してこないんです。もっと若い世代の人が続いてきてほしいなと思って。
私みたいにニューオリンズに興味のある人たちが気軽に来れるような、窓口というかフックみたいなものがもっとあっても良いんじゃないかと思って、こういう企画を始めました。
※CDの中身はこんな感じです!こちらにもきれいな桜があしらわれていますね。
――素晴らしいことだと思います。菊池さんのこの企画を通して、輪がもっと広がっていったらと思うとワクワクします。
日本にも素晴らしいミュージシャンがいっぱいいますし、もちろんニューオリンズにもいます。この企画を通して、幅広くいろんな同志を結び合わせられたらなと思っています。本作にも総勢40人くらいのミュージシャンに参加していただきました。
――40人!すごいです。それだけたくさんのミュージシャンを結び付けたということですね。CDは曲ごとにメンバーががらりと変わる構成となっています。曲や演奏の方向性などは、その時のメンバーの雰囲気にやはり大きく左右されるものですか?
そういうことはすごくありました。だいたい日本からのゲストが決まってから現地のミュージシャンを決めるんですが、私が一個こだわっているのは、絶対に「踊れるジャズ」をやるというところで。
――ジャズって、どちらかというと「しっとりした」音楽というイメージがあります。でも菊池さんの作品には、自然と体が動いてしまうような、楽しい雰囲気が作品全体に満ちていると感じました。
ジャズにはなんとなく「おしゃれ」なイメージがありますよね。でもニューオリンズのジャズって、基本ダンスミュージックなんです。
ニューオリンズでは「踊りたくなる」音楽が人気、みたいなところがあって。ジャズでも、私が得意としているトラディショナルなスタイルのジャズは、昔ダンスホールで演奏されていたような音楽なので。それで、なるべく「踊れるジャズ」をやろうというのが大きなテーマとしてありました。
とはいってもみんな得意不得意はあると思うし、この人にはこういう曲が合ってる、というのを考えて、その人の良さを出してくれるニューオリンズのミュージシャンを引き合わせるように心がけていました。
私自身が目立つというよりも、プロデューサーとしてゲストを立てる、という意識でやっていましたね。
――それで自然と体が動いてしまうような、楽しい雰囲気が作品全体に満ちているんですね!
少し変わったところでは、「The Mooche」という曲で本作に参加していただいた近秀樹さんというピアニストで、大阪芸術大学の教授という方がいらっしゃるんですけど。うちの主人(ピアニスト:辻佳孝さん)のピアノの先生でもあったんです。
その縁で参加していただいたんですが、近さん自身はニューオリンズに来たことも今までなければ、ニューオリンズの音楽をやっているわけでもなかったんですが、私が「踊れるジャズ」にこだわって、デューク・エリントンの曲を選びました。
――この曲、とても好きでした。そんな背景があったんですね。制作の中で大変だったことはありますか?
そうですね……、みんなが時間通り来てくれるかとか、心配はありましたね(笑)。
――(笑)。実際、時間通りに揃わなかったこともあるんですか?
ありますあります。このレコーディングはギリギリ大丈夫でしたけど、場所を間違えちゃったりとか。来てくれるか不安な人はこちらから迎えに行ったりとか。
ニューオリンズのミュージシャンの中には、スマホを持ってない人もいましたから。
――それは大変です。
前日にリマインドとしてその人に直接言いに行こうと思って、でもスマホもないからどこにいるのか分からなくて、とりあえずその人がストリート演奏していそうなところを自転車で回ったりして。
――なんだかんだ、それで見つかるのもすごいですね(笑)。
ニューオリンズならではですね。本当に街が音楽であふれていますから。
――ニューオリンズの街そのものの魅力も伝える、本当に良い作品だなと思います。改めて、本作の聴きどころを教えてください。
私にとって、レコーディングって記念写真みたいなものなんです。いろんな加工をしたり、音を重ねたりするレコーディングももちろん良いと思うんですけど、これは全部一発撮りで。いろんな人がその場に集まって、楽しく話しているのを撮った、そんな作品です。
もう一回このメンバーが集まって録音してみても、また全然違うものができる。家族で撮る写真みたいなところがありますね。
2016年から4年かけて全部ニューオリンズで録音したので、これを聴いてくださった方には、ニューオリンズという楽しい街があって、そこでは人種も言語も関係なく、楽しいことをやっているんだな、ということが伝わってくれたら嬉しいです。
――ありがとうございます!家族の記念写真、とても良い表現ですね。日本とニューオリンズの街が、この作品を通してきっと縮まったんじゃないかと思います。
後編では、菊池さんと千葉のことについて、さらにいろんなことをお聞きしていきます!
※菊池ハルカさんの新作『Japan: New Orleans Collection Series』購入、配信等はこちらから!
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※配信の場合はこちらからどうぞ!
iTunes Download (and Apple Music)
Bandcamp
https://harombone.bandcamp.com/album/japan-new-orleans-collection-series