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松尾貴臣さん
(こころざし音楽工房代表取締役・シンガーソングライター)後編

進化するアイドル、魂を揺さぶる本物のシンガーソングライターへ

アイドルの地点にとどまらず、松尾さんはもっと先へ、もっと高く、羽ばたいている。自分の歌を必要としてくれる人がいる。日本のどこかで待っている。だから旅をして歌い続ける。そうして積み重ねたライブは実に4000回。経験値は心を研ぎ澄まし、声はいっそうやわらかく深みと魅力を増した。音楽の力は、時に人を勇気づけ、慰め、励まし、魂を揺さぶる。アイドルから「本物のシンガーソングライター」「福祉アーティスト」「社会派音楽活動家」へ。フィールドは限りなく広がっている。松尾貴臣さんは今も、進化し続けている。

松尾 貴臣(まつお たかおみ)さん

長崎市生まれ。こころざし音楽工房代表取締役・シンガーソングライター・福祉アーティスト・社会派音楽活動家。千葉大学大学院社会科学研究科在学中にCDデビュー。株式会社こころざし音楽工房を設立。CD「アイノコトバ」でメジャーデビュー。全国の病院・福祉施設・学校などで展開している「歌う坂本龍馬プロジェクト」が評価され、これまでの総公演数は4000回を超える。社会派音楽活動家として各地のメディアに報道される。活動は高く評価され、数々の賞を受賞。

歌う意味さえ変えた女性との出会い それがホスピタルライブの原点

──「徳光和夫の名曲にっぽん 昭和歌謡人」というテレビ番組で、松尾さんのホスピタルライブ「歌う坂本龍馬プロジェクト」が2週間に渡って特集されていました。また今年の5月には、J:COMの「ジモトに乾杯!居酒屋小堺クン」に出演されました。盛り上がりましたね!でもどうして令和の今、坂本龍馬なんでしょう?

龍馬はカッコイイじゃないですか。大志をいだいて、誰にを言われてもこころざしを果たしていく。「世の人はわれをなんとも言はば言え、わが成すことは我のみぞ知る」ですよ。だから会社も「こころざし音楽工房」なんです。


▲松尾さんが主催するホスピタルライブ

──ホスピタルライブをはじめられたきっかけは?

末期がんの女性と出会って、衝撃を受けたんです。半年と命の期限を切られた彼女が、講演で明るく話している。ここまで強く、明るく、自分の死を受け止められるものだろうか?と。

その出会いが、歌う意味さえも変えてしまったように思います。健康であることを喜び、好きな歌を歌って生きていることを幸せと感じ、「世の中には生きたくても生きられない人がいる」ということを、多くの若者に伝えたい。そう思うようになりました。癌と闘いながらも、輝きながら生きた彼女の歌を歌おう、心の底から思ったんです。


▲ホスピタルライブでの交流の様子

──代表作のひとつ「きみに読む物語」は、彼女との出会いでできたんですね。

この曲が、「日本ホスピス・在宅ケア研究会in千葉」のイメージソングに選ばれました。全国の病院や福祉施設を巡るという現在の「ホスピタルライブ」という活動スタイルは、彼女との出会いで決まったんです。

──施設の方は、歌を聴いてどうですか?

車椅子で歩けないはずのおばあさんが、立ち上がって拍手する。笑ったことのないおじいさんが、はじめて笑顔を見せる。あまり頻繁に起きるので、歌の力でかが起きているんですね。まるでスターを迎えたように、活気づくんです。僕はそれを「非日常の彩り」と呼んでいます。日常では起きない、「何か」なんです。

「幸せを届けるアーティスト」「音楽活動家」であることが僕の誇り

──ヒットチャートに乗るだけが音楽家ではない。松尾さんはそれを生きざまで証明されていらっしゃると思うのですが?

「福祉」=「幸せ」だと、僕は定義しているんです。それは誰にでも平等に与えられる幸せで、だから病んでいても、貧しくとも、人は平等に幸せを与えられるんだと思いました。「福祉アーティスト」という造語を作ったんですが、それは「幸せを届けるアーティスト」なんです。

音楽活動家というのも僕の造語なんですが、音楽を通じた社会活動なんです。曲を作って、企画して、届けていく「音楽家」。社会を明るく良くしていこうという「社会活動」を掛け合わせました。

──国際ソロプチミスト千葉「社会ボランティア賞千葉クラブ賞」、第67回「社会を明るくする運動」感謝状受賞など、社会活動が高く評価されていますね。

がむしゃらに動いていたら、ついてきたという感じです。「幸せを届けるアーティスト」であり「音楽活動家」であることを、僕は誇りに思います。

「ゆず」のように、未開拓のホスピタルライブをメジャーに!

──欧米では、ボランティアをしていると尊敬されますし、社会的なステータスになります。つまり日本社会全体の福祉への意識啓蒙や底上げを、若いミュージシャンが切り拓いていく、挑戦ですね。

今は、福祉施設や病院というと、慰問とか趣味のバンドの方くらいのイメージだと思います。若い人やプロは行きたいとはあまり思わない。でも立派なステージの設備がある場所も増えていますし、これからもご高齢の方の人口が増えてニーズが大きくなる。さらに耳が肥えている世代に代わっていき、自然とクオリティが求められるフィールドに変わってくると思うんです。


▲2007年から継続している「ホスピタルライブ」

──はじめたばかりの分野なんですね。ですから松尾さんのように若くてとても歌が巧いプロが歌うと、びっくりされるし、感動されるんですね。「ゆずがストリートライブをメジャーにしたように、ホスピタルライブをメジャーに!」というこころざしも、実現できる日がきますね!

 コロナ禍でも歌は届けられる 2030年稲佐山凱旋ライブへの新たな挑戦

──コロナの影響で、ミュージシャンや演劇など、文化活動全体がかなり制限を受けています。

オンラインライブで、施設の方に歌を届けています。またFacebookでもオンラインライブを発信して、歌とトークでファンの方と交流を深めています。コンサートの方にも力を入れて活動していますし、学校など、子供たちへも歌を届けはじめています。

──2022年9月3日には、長崎県長崎市稲佐山(いさやま)公園野外ステージで「松尾貴臣2022年稲佐山凱旋ライブ」を開催されましたね。おめでとうございます!どうして千葉ではなく、長崎市稲佐山公園野外ステージだったんですか?

福山雅治さんやさだまさしさんが、コンサートを開いたステージですから、長崎人にとってはシンボリックな場所です。コロナで2回延長したんですが、約束を果たせました。「最幸」でした!8年後の2030年4月20日に「松尾貴臣2030年稲佐山凱旋ライブ」を開催することも、9月3日にステージで発表しました。

歌は、人生を変える力をもっていると思います。

新しい目標に向けて、自分を奮い立たせ、僕は歌い続けます!


▲2回の延長を経て開催された「松尾貴臣2022年稲佐山凱旋ライブ」

関連リンク

松尾貴臣さん公式HP
https://www.omitaka.com/index.html

「きみに読む物語」
https://www.youtube.com/watch?v=UTvtcpzwLjM&t=1s

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