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早川のり子さん
(フラワーアーティスト)後編

型にはまるのではなく、暮らしに寄り添った花生けを大切にしたい

「切り花は、花の自然の営みを断ってしまう。その責任を感じながら生ける。それが花を生ける者の使命です」と静かに話す早川のり子さん。一輪一輪に、慈しみと心を込める花生けは、命あるものの限りある美しさを見る者に問いかけます。和と洋の融合の独自の美の世界をどう編み出していかれたのかを、うかがいました。

早川のり子さん 
(フラワーアーティスト・早川のり子フラワークリエーションアカデミー主宰)
千葉県佐倉市在住。22歳で生け花(古流)の師範に。その後ヨーロピアンフラワーアレンジメントを学び、和と洋を融合させた独自の自由花のスタイルを確立。1992年「早川のり子フラワークリエーションアカデミー」を主宰するとともにフラワーショップをオープン。西洋の華やかさと、和の華道の技術を駆使したオリジナリティ溢れる繊細な造形の美しさは高く評価されています。テレビ出演(NHK他)・雑誌・写真集・舞台装飾など活躍中。

──生け花をはじめられたきっかけを、教えてください。

母が「古流(こりゅう)」という日本の生け花を習っていたんです。生け花は枝ものを切るので、けっこう力がいるんですね。小学生ではちょっと無理ということで、中学生から始めました。

生け花には、決まり事がすごく多いんです。型が決まっていて、堅苦しい感じがあって。そしてそれをどこに飾ろうかというと、今の住宅事情だとなんだかちょっと違う。現代では床の間があるお宅ばかりではないですし。暮らしに寄り添った花生けというものが必要ではないのかと、今も思っています。

生死のうつろいまでを、花や自然に感じ取る日本人の美意識

──それが西洋のフラワーアレンジメントを学ばれる動機になったんですね。日本の生け花と西洋のフラワーアレンジメントとの違いを教えて下さい。

大きな違いといえば、日本の生け花は引き算で、西洋は足し算なんです。ぎゅっと詰まっているかどうか、そこが大きな違いだと思います。

私は、和と洋の両方をあわせもった花生けが好きなんですね。なぜかというと、日本の生け花は四季をすごく大切にしているからです。日本人の美意識は、生死のうつろいまでを、花や自然、四季折々に繊細に感じ取るんですね。

例えばバラや蘭などは一年中あるじゃないですか。そこに枝ものがちょっと入ると、季節感が出ます。今のお宅は西洋式になっていることが多いので、お宅に合わせながらも日本の四季を楽しむ。そういう花生けをしています。

花をアートの道具にしてはいけない

──いわゆる和と洋の融合した「自由花」ですね。どちらでフラワーアレンジメントを学ばれたんですか?

テレビを見ていて、芸能人の方が話していらっしゃるバックにお花が飾ってありました。それでピンときたんです。ああ、和の生け花ではなく、こういうものがあるんだと。そこから西洋のフラワーアレンジメントというものにたどり着いたんです。

当時全国にお弟子さんがいる大きなところがあったんですね。でも、なんだか自分の中でしっくりと来なくて、違うと思ったんです。何が違うかというと、アートっぽすぎるんです。お花をひとつの造形的なものにする、道具にし過ぎるんですね。本来の自然の美しさを生かすというよりは、ワイヤーでぐるぐるに巻いて不自然に造形する。それがものすごく違うと思えたんです。

たまたまファッション雑誌である広告のお花を見まして、またピンときたんです。すぐ雑誌社に電話して、その作者の方を調べて連絡を取ったんです。

「あんりゆき」先生は、イギリスでフラワースクールを卒業されて、英国王室や英国の一流ホテル、市長官邸の装飾に関わる方でした。その方が帰国されて、赤坂でスクールを開いていらっしゃるとうかがって、すぐに習い始めました。18歳ぐらいでした。

花をどこかで飾っていただきたい 飛び込んだ先で出会った幸運

その後、せっかく自分で生けたお花をどこかで飾っていただきたくて、飛び込みで飾ってくださるところを、いくつもいくつもあたって探したんです。高級ブティックのショーウインドウに、やっと飾っていただくことになって。それがご縁で、そちらに勤めていた主人と出会ったんです。

──すごい行動力ですね!

その時は若かったですし、お花のことしか見えなかったですね。夫もお花が好きで、リヨンに住んだこともあって。この西洋館は、夫がヨーロッパの建材を取り寄せて、細かいところまでこだわって造ってくれました。彼と出会わなければ、今はなかったと思うんです。

うちの生徒さんは100人くらいです。一度学ばれると、辞められる方はほとんどいらっしゃらないですね。30年続けていらっしゃる方や、神奈川県など遠くから通ってくださる方もいらっしゃいます。うちの花展は、お客様もすごく多いんです。2日間で1000人とか、すごかったですよ。

花は生きている、それを生かすのが花を生ける人間の使命

──早川さんにとって花を生けるということは、どういうことでしょうか?

生きたお花というのは、アートを表現する道具じゃダメなんです。生きている、それを生かしてあげないといけないと思うんですね。それが私のような花を生ける人間の使命というか。

 

野に咲いているお花というのは、根が土に生えているので、生き生きとつぼみが開いたり、自然の摂理にかなっていくんです。それが美しいじゃないですか。そういう自然の営みを、切ってしまう、断ってしまうわけです。それを断ってしまったという責任感を感じながら生けないと。

一輪一輪を、野に咲いている以上にきれいに咲かせてあげたい。そういった心づもりでいつも臨んでいるんです。

関連リンク

「花の西洋館」公式ホームページ
https://www.hananoseiyoukan.com/

NHK放映「咲かせよう千葉」
https://www.facebook.com/hiroshi.kondo.549/videos/1509092739275222/

【写真集】

「いつもそばに花がある」文化出版局

「SIMPLE FLOWERS」講談社インターナショナル 海外向け・英語版

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