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大野靖之さん
(シンガーソングライター)後編

「君はよくがんばってきた」そう励ましてくれた人間力大賞

「夢は口にした瞬間から叶い始める」。夢を語り続け、子どもたちの心に種をまき続ける大野さん。手応えはなかなかつかめず、17年もの間、悩み葛藤することも。けれども最近「あの時の大野さんの言葉に背中を押されて、夢をあきらめないでがんばろうと思いました」というメッセージを受け取るように。「今は確実に思えます」と大野さんは語ります。「心にまいた種は、やわらかな芽をだし、花ひらいています」、と。

大野靖之(おおのやすゆき)

2005年メジャーデビュー。47都道府県を制覇した日本全国での学校ライブは、現在1032回。活動は高く評価され、新聞、テレビ、ラジオなど多数出演、CMにも起用された。2008年、人間力大賞(青年版国民栄誉賞)ではグランプリを受賞。数校で非常勤講師を務め、9校の学校の校歌制作。道徳・家庭科の教科書に歌詞が使用された実績も。きずな出版他より著書が発売中。

──26歳で人間力大賞を受賞されました。青年が受ける国民栄誉賞とも言われる賞ですが、受賞された時はどのように思われましたか?

その時期はとても悩んでいたし、葛藤していました。僕の夢は、自分の作品が世に出て、評価されて、音楽チャートにもどんどんのっていて、みんなに親しまれる音楽になっていく。そして紅白出場。でもそれがなかなか叶わない。その時一年に120本くらい学校ライブをやっていたんですよ。

──単純に3日に1回くらいですよね。でも時期が集中するから、1日に2校ということもあったんでしょうか?

そうですね。とにかくそういう多忙な日々を送っていても、ヒットにつながらないんです。素晴らしいことをやっていると、みんなが言ってくださるんですね。でも自分がそう思えなくて常に悩んでいたんです。そんななか、いただいた賞だったんですね。

はじめて「君はよくがんばってきたね」って言われているような気がして、励みになりました。「ようし。また頑張ってみよう」。そう思えた瞬間でした。


▲大野さんの歌と、その姿を見て笑ったり涙する子どもたち。楽曲は『夢のつぼみ』。

 子どもたちに大切なメッセージを伝えるには、心を開くことが重要

──大野さんは、常に子どもたちに本気でぶつかっていますね。どうやって子どもたちの心をつかんでいるのですか?

「大切な話をしにきました。命の大切さ、夢の大切さを、これから聞いてもらうからね」なんてことを最初から言ったら、子どもたちは引いてしまいます。僕は、はじめからそんな話は絶対しないです。

もう、ただただみんなが盛り上がるような面白い話をしたり、ふざけたり、笑わせる。前半はそれだけなんですよ。そうすると、ようやく彼らが心を開いて、この人の話を聞いてみようかなって気になるんです。それからじゃないと、大事な話は絶対できないです。大事なメッセージ――命の大切さとか、夢をもつことの素晴らしさを伝えるのは、後半に差し掛かってからです。

そうすると彼らは、とんでもなく集中してくるんです。しーんと、すごく静まりかえって僕の話に聞き入ってくれる。その土台を前半に必ず作るんです。

誰に反対されてもやめろと言われてもやる。それが夢を叶える人

──学校ライブで、保護者の方から悩みを打ち明けられることもあるとうかがいました。具体的にはどんなことでしょうか?

一番多いのは、子どもの夢に対しての相談ですね。たとえば子どもがミュージシャンになりたいという夢をもっている。けれどもお母さんは、そんな難しい夢を追うのはやめなさいと反対してしまった。でも僕のライブを見てすごく反省した、というご相談がありました。

僕はこう答えたんです。「別にそんなことは気にしなくていいですよ。音楽が本当に好きなら、子どもは隠れてでもやりますから」と。親に反対されてやめるなら、それまでの夢だったってことです。もう絶対そう思いますよ。誰に反対されても、やめろって言われても、やる子はやりますから。夢を叶えられる人ってそういう人だと、僕は本当に思います。


▲自身で作曲した校歌の指揮者を務めることも。

何かが子どもたちの心に残って、10年たってから花開けばいい

──ミレーの「種まく人」ではないですけれど、大野さんは心に種をまいていらっしゃるのではないのかな、と思うんです。

当時小・中学生だった子たちからSNSを通してメッセージがくるようになりました。「小学校の時に大野さんがライブに来てくださいました。すごく感動したのを今でも覚えています」と言う子もいます。「あの時の大野さんの言葉に背中を押されて、夢をあきらめないでがんばろうと思いました」「今の僕があるのも大野さんのおかげです」「今でもずっと大野さんの歌を聴いてがんばっています」。彼らが大人になってから、そういう声を聞けるようになったんです。

これでいいんだと。当時はわからなくても、なにか彼らの心に残っていて、それが5年10年たってから、花開けばいいんじゃないのかなと。この日本全国でそういう子がいっぱいいるんじゃないかと。そう思えるようになったんです。

夢は捨てない。でも心の中での夢の位置はずらせる

──「夢は口にした瞬間から叶い始める」。紅白に出たいというのが、大野さんの若い頃からの夢ですが、今はいかがでしょうか?

夢は捨てていないです。作品を作り日々努力すること、苦しみや壁を乗り越えようと思えるのは、夢や目標があるからであって、やはり夢って大事ですよ。

だから夢は捨てないですけれど、自分の心の中での位置をずらそうって、今は思うようになりました。今目の前の仕事とか、誰かの役に立てること、そういうものにちゃんと集中しよう、そしてその先に夢が叶ったら、素敵じゃないかと。いずれ紅白の方から出てくださいと言われる人になろうと。

──これからもぜひ、人の記憶に残り、心に種をまく歌を歌い続けてください。ありがとうございました! 

関連リンク

大野靖之さんのオフィシャルブログ
https://lineblog.me/oonoyasuyuki/

大野靖之紹介ムービー
https://youtu.be/u1dgIBCqfMg

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