千葉のワーママに学ぶ!仕事と子育て

渡邉さちさん
(元保育士・イラストレーター・雑貨屋店員)前編

虐待をなくしたい! フリーランス保育士のママ支援策とは

東京都日野市在住の渡邉さちさんの現在の肩書は、雑貨屋店員・イラストレーター。でもその正体は、保育士の資格と経験を生かし、さまざまな場所やシーンでママの笑顔づくりを応援する育児支援のエキスパートです。

なぜ、どのように活動を行っているのでしょうか。そして雑貨店勤務と育児の関連は? これまでの歩みをご本人にうかがいました。

渡邉さちさん

1976年生まれ。東京都日野市出身。専門学校で保育士の資格を取得し、八王子市の私立保育園に就職。8年間勤務の後、障がい児施設に2年間勤め、2007年出産のために退職。09年からNPO法人「子どもへのまなざし」のメンバーに。『Nobody's Perfect プログラム』ファシリテーター、『育自のための小さな魔法』ファシリテーターの認定を取得。14年に『SALON DE MAMBO』を立ち上げ、日野市を中心に、フリーランス保育士として育児支援プログラムの提供を開始。16年よりイラストレーターとしての活動も始める。18年に保育園に就職。クラスを持ちながら子育て広場で母親向けにワークショップを開催。2020年より雑貨屋スタッフとして勤務。

渡邉さんの母親支援のスタートは、保育士の専門学校卒業後に入った私立保育園でした。

「昔から妹や近所の年下の子たちの面倒をよく見ていたんです。周囲の大人から“面倒見がいいね”“子どもを遊ばせるのが上手だから、将来は保母さんね”といわれ続けるうちに、自分も保育士になるもんだと思い込んで、自然に(笑)」

保育園勤務を経て、出産を機に保育フィールドを拡大


▲園児に絵本の読み聞かせを行う渡邉さん

在職中に26歳で結婚。28歳で障がい児施設に転職し、2年間の勤務を経て出産を機に退職。男の子のママになりました。

実は渡邉さんらしさが発揮されるのは、ここから。

持前の面倒見の良さと経験を生かし、ママ歴2年目には、日野市内で子どもの遊び場づくりを進めるNPO法人「子どもへのまなざし」のメンバーに。その活動で2つの親支援プログラムに感銘を受け、さっそくファシリテーターの認定を取得。NPOで助成金を取り、プログラムを開催。運営や企画進行に携わり、プログラムの進行も担当し、年に1回、3年間連続で開催しました。

しだいに「もっと多くの人にプログラムを届けたい」との思いが芽生え、子どもの小学校入学を機に、子育てサロン『SALON DE MAMBO』を設立。自宅や子連れカフェ、公民館などでワークショップを開催するようになったといいます。

親支援プログラムとは、どのようなものなのでしょうか。

「1つは『ノーバディーズ・パーフェクト・プログラム』(NPプログラム)といって、自分の価値観を知り、自分らしい子育て方法を見つける、というプログラム。サロンではその一部をアレンジした「考え方のステップ」を学ぶワークショップを開催しました。

例えば子どもがご飯を食べなくて困っている場合。食べさせる方法ではなく、なぜ子どもが食べないと困るのか、周囲と比較してしまうとか、義母の目が気になるとか、背景にある自分自身の価値観を知ることで本当の解決策を探ろうというものです」

もう1つは、NPO法人「育自の魔法」が考案した『育自のための小さな魔法』というプログラムです。

「数人が集まってそれぞれ自分自身のことを語る中で、これまでの人生を見つめ直し、自分は何が好きなのか、どうありたいのを探り未来を描くというもの。自分を大事にすることで、やはり自分らしくイキイキと子育てをできるようになることが目的です」

虐待しそうになるほど“しんどい”ママを救うのも保育士の使命

渡邉さん自身、これらのプログラムに助けられたと話します。

「私は保育士なので、子育てを楽しむ自信があったんです。でも違っていました。やっぱり24時間子どもと一緒にいると疲れるし余裕がなくなる。しだいに外遊びの目的が、早く子どもを寝かせて自分の時間を確保することになっていって…。昼寝をせずに遊ぶ息子を見ると、“元気でいい”と頭では思いながら子どもの腕を引く手に力が入ったり、泣き声に気づかないフリをしたい自分がいたり。

加えて、育児の考え方は各家庭で違い、自分の価値観を優先できないこともあるものです。私もそうで、息子が0歳のころは近所のママ友を集めて定期的に食事会やイベントをしていたのですが、徐々に距離をおくようになりました。でも本音で話せないのは本当にしんどい。自分が自分らしくいられる時間がないと、虐待しかねないほど追いつめられるのだと知りました」

本音で話す場を探す中で「NPO法人子どもへのまなざし」を知り、親支援プログラムに出合ったという流れです。

サロンを立ち上げるにあたって、“虐待されている子どもをなくす”“虐待しちゃうほどしんどくなっているお母さんを救う”というコミットメント(誓約)を掲げたのも、この経験から。保育施設という場所にこだわらずに子どもと母親を応援したいという思いから、フリーランス保育士を名乗るようになりました。

千葉のママの応援を受け、イラストレーターに

精力的な取り組みが評判となり、保育士を目指す大学生を対象にした講義を受け持ったり、世田谷区子育て課が開催したNP講座でファシリテーターをつとめたりと、活躍の場が広がりました。

一方、2016年からはイラストレーターとしての活動も開始。実はその背中を押したのが、千葉のママグループでした。


▲渡邉さんが挿絵を担当したNPO法人「育自の魔法」のワークブック。可愛らしく生き生きとしたキャラクターたちに惹きつけられる

一体この千葉のママグループとは? 後編では、イラストレーターと雑貨店勤務という顔を持つに至った道のりと、渡邉さんによるママがイキイキするためのテクニックをご紹介します。

関連リンク

▼NPO法人「育自の魔法」公式サイト
https://ikujinomahou.jp/

▼「千葉のワーママに学ぶ!仕事と子育て」第1回 Sumireさん
https://worldhouse.koori.jp/unau/category/detail/?id=165

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