千葉ゆかりのあの人に聞く Chibaの魅力

Vol.4:菊池ハルカさん
(ミュージシャン)中編

「ショットガンハウス」って何? 菊池さんの新作に見る、日本と西洋のつながり

千葉出身で現在はアメリカ・ニューオリンズにてジャズトロンボーン奏者として活躍中の菊池ハルカさん中編では、現在のニューオリンズの様子や、今年5月に出たばかりの菊池さんの新作CD、さらには、ニューオリンズと日本の家づくりの違いまで、ボリュームたっぷりにお届けします! 

菊池ハルカ(きくちはるか)
千葉県柏市出身。高校入学と同時にジャズ発祥の地、ニューオリンズの音楽と出会い、ジャズトロンボーン奏者を志す。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。大学時は、早稲田大学ニューオルリンズジャズクラブにも在籍。2013末に渡米、現在はアメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオリンズ市で活動。ジャズを中心に、多ジャンルのバンドを掛け持ちしている。ツアーで訪れた国は10カ国以上。2018年、マルディグラ・インディアンCha Waのメンバーとしてグラミー賞ノミネート。

――新型コロナウイルスの感染拡大で、いまは非常に大変な時期かと思います。その中でも定期的にピアニストのご主人さん(辻佳孝さん)と、ご自宅の庭からインスタライブでデュオ演奏の様子を配信されるなど、出来る活動を続けていらっしゃいますね。いま、ニューオリンズの様子はいかがでしょうか。

ニューオリンズは3月の16日からお店が一気に閉まって、みんな外に出ないようになりました。街のミュージシャンも演奏する場所がないので、最近はあちこちでライブストリーミングをする動きがありますね。

でも、うちの場合は私がトロンボーンで主人がピアノなので家族で自宅から配信できるんですが、そうじゃない人はなかなか難しいところがあって。

離れている人とセッションできるアプリケーションを使ったり、工夫しているバンドもありますけど、基本的には集まってライブというのはまだまだ先ですね。

――現地の知り合いの方と会ったり、電話で話したりすることはありますか。

電話では全然ないですね。でも、実は今日たまたま、つい先ほど私が所属している、メンバーが女性だけのジャズバンド“Shake'Em Up Jazz Band”でトランペットを吹いているMarlaが家に寄ってくれて。「夕飯食べてる?」みたいな感じで来て、晩ご飯をくれたんです!でもそれが2カ月ぶりの再会でしたね。

――日本の方、ご家族やご友人とは連絡を取られたりしますか?

今はもうビデオ通話でつながれるようになって、この取材もそうですけど。それで連絡を取り合っています。実は先日、日本で甥っ子が生まれたんですよ。

――えっ、そうなんですか!おめでとうございます!

ありがとうございます。今は病院が大変だから出産時に立ち合いもできないし、面会もできないんですが、海外に住んでいながら、ビデオ通話でいち早く甥っ子の姿を見られるのは良かったです。

――確かに、それは今だからこそですね。

こないだは私の子供の1歳半検診もありました。今こちらの病院は具合の悪い人がいきなり病院に行かないで、一回電話して先生の指示を仰いでから病院に来てください、ということになっていて、病院に来ている人自体はとても少なかったです。いつも総合病院みたいなところに行っているので、普段は大人も含めていろんな人が診断を受けに来るんですけど。

病院に入る前には、非接触型の体温計を使って検温されました。

――ああ!あの頭にピッ、ってするタイプのものですね。

そう!(笑)それで大丈夫です、ってシールをもらって中に入って。検診も無事に終わりました。

――良かったです。ところで、事前に今のニューオリンズの街の様子を収めた写真を何枚か送っていただきました。これ、すごくきれいな写真だなと思いました。

ほんとに!ありがとうございます。

――普段ご自身のブログhttp://haroblog.jugem.jp/でもたくさん写真を上げられていますよね。それで、とても上手だなと思いまして。

ニューオリンズに引っ越したばかりの時は、「海外だ!」みたいな感じで(笑)、たくさん撮ってはブログも更新していました。今は子供もいるのもあり、以前よりは更新のペースを落としています。

――でも、ニューオリンズって普段は本当に四六時中人であふれているイメージなだけに、今回お送りいただいた通りに全然人がいない写真にはびっくりしました。

3月に制限が開始された時は本当にいきなりお店が一斉に休業になったので、いったいどうなったんだろうと思って、最初は街の様子を、興味本位で車を走らせて見に行っちゃったりしたんですけど、でもだんだんと悲しくなってきて。街から誰もいなくなった景色を見ているうちに、これからどうなってしまうんだろうと思っていました。

今はそれにも慣れてきて、まあどうにかなるさという気持ちにもなってきています。ニューオリンズの人の気質に影響されたのかもしれませんね。

有名な24時間営業の喫茶店「カフェデュモンド」も、全部のイスとテーブルを片付けて掃除するっていうのを、多分何十年かぶりにやっていたりとか。街全体がいま綺麗になったんじゃないかなと思います。見た目もそうですし、みんなの意識の面でも変わりましたね。

――確かに、こんな時でもないと腰を据えて掃除できないかもしれませんね(笑)。

――今は一日をどんな感じで過ごされていますか?

今はほとんど一日家にいます。幸い今は1歳半の子供がいるので、子供と一緒に起きて、ご飯食べて、昼寝して、天気が良かったりしたら近所を散歩して、昼寝して……(笑)、もう夜は9時には寝てます。

――9時ですか!

そうなんです、これまでは夜の演奏の仕事が多かったので、例えば「メゾンバーボン」というお店では夜の7時半から1時まで、5時間以上演奏していたりとか、他の店でも夜の10時から2時までとか演奏していたのが、今ではもう遠い昔のように感じます。昨日主人は夜は8時に寝て、今朝は5時に起きてました。

――健康的!でも確かに今はできるだけ健康に過ごしていた方が良いですもんね。

――そんな中ですが菊池さん、寝てばかりというわけではなくて(笑)。新作のアルバムJapan: New Orleans Collection Series』を発表されました。既にApple MusicBandcampでの配信が開始していますが、この度CDも販売スタート。おめでとうございます!

ありがとうございます!現地では誰でも知ってるレコードショップ「ルイジアナミュージックファクトリー」、店舗自体は現在休業中なんですが、オンラインストアにて通販が開始しています。

――それでは菊池さんの新作についてもいろいろとお聞きしたいと思います。

はい、ちょっと待ってください(CDを取りに行く)……これを作りました!

――ありがとうございます!ジャケットのデザインは、ニューオリンズのデザイナーに頼んだんですか?

これは日本の友人が描いてくれました。大学生の時に私が企画したコンサートのパンフレットをデザインしてくれた友人に、10年ぶりくらいに連絡を取ったんです。私がいま実はニューオリンズに住んでいて、というところから説明しました。それで、アルバムに和洋折衷のデザインを描いてくださいとお願いしたんです。

――そうだったんですね!すごく素敵なデザインだと思いました。

とてもいい感じにしてくれて、本当にうれしかったです。裏面にはニューオリンズによくみられる、「ショットガンハウス」というスタイルの家の形が絵に描かれています。

――「ショットガンハウス」について、もう少し詳しくお聞きしたいです!

「ショットガンハウス」は、全体が長方形で、入り口から部屋が一列に奥まで並んでいるんです。日本家屋にあるような、横並びにいくつかの部屋があるという構造をしていないんですね。

玄関を入っていくと最初にリビングがあって、まっすぐ進んで次の部屋に入るとそこは寝室で、だいたい奥にはキッチンがあって、一番最後にトイレがあるというのが基本的な構造です。

ニューオリンズはこうした「ショットガンハウス」がすごく多い。とにかく縦に長くて、全ての部屋を通過しないとトイレに行けないという変わった間取りなんですね。

庭はありますが、2階建ては少ないです。見た目はカラフルでとてもかわいいですね。

――菊池さんのCDのデザインにもニューオリンズのカラフルな色使いが表れていますね。素敵だなと思います。移住し始めて、建物の違いなどで戸惑ったことはありますか?

こちらの住居って、日本と比べて天井が高いんです。それで天井の照明器具を交換するのには苦労しましたね。結局最初はうまくいかなくて、業者の方に来てもらいました。

あとは日本の家って、すき間が少ないんだなと実感しました。今の家は正直すき間だらけで、いろんなものが入ってきてしまいます……(笑)。風ももうすき間風とは言えないくらい、たくさん入ってきますね。

――そんなことが……、大変じゃないですか。

ニューオリンズって地震がないので、ライブハウスの中にはもう見るからに歪んでしまっている建物とかもありますけど、それでも倒れることはないんですよね。言ってしまえば、つくりには雑なところもあります……。

――確かに、日本には地震もある分、つくりも頑丈ですし、変なものが入ってくるようなすき間もないですね。普段は当たり前に思って意識しない部分ですけど、改めてそのことにありがたみも感じます。

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